《印西の里山に吹く季節の風を、そっとすくいあげながら》
草深原狐秋桜堂は、幻想と手しごとが交わる
小さな物語仕立てのアクセサリーのお店です。
季節の境い目や里山の風景、
胸の奥にひそむ名もなき祈りを
ビーズや天然石、さざれ石にそっと映しとり
「魂飾り(たまかざり)」としてお仕立てしています。
それは石の力を語る飾りではなく、
ひと粒の珠に宿る “物語の欠片”。
ちいさな珠に、そっと祈りをこめて――
〜店主 十五夜小町〜
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ここは、下総の国。
ひと粒の飾りから物語がはじまる
不思議な原っぱのどこかにある小間物店「草深原狐秋桜堂」。
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江戸の都から東へ向かうと、やがて「木下街道(きおろしかいどう)」という一本の道に出る。
この道は行徳や市川を抜け、佐倉を通り、やがて利根川を目指す旅人たちが往き来する、にぎやかな街道じゃった。
その道すがら、ふかぁく草の生い茂る広野があり、
人々はそこを「草深(そうふけ)」と呼んでおった。
草は肩の丈まで伸び、春は若芽の匂い、夏は虫の唄、秋には紅の秋桜が風にゆらめき、霧の降りる朝には狐火が灯るとも申された。
この草深い原っぱには、昔からいたずら狐が住みついていて、原っぱを通り抜ける人々を
夜な夜なばかして楽しんでいたそうな…。
ところがある年のこと。
木下街道の舟待ち町・木下宿(きおろしじゅく)は、川越しの高瀬舟でにぎわいを見せておった。
ある晩、旅籠の囲炉裏では、焼き餅と煮しめの香りのなか、旅人たちがこう囁いておった。
「昨夜のことじゃ。胸の内に秘めた願いが、
どうにも膨らんでな……誰にも言えぬまま、
独りで眠りについたんじゃ」
「そしたらのぉ...明け方の草深はやけに霧が濃くて──
歩き慣れたはずの道に、見覚えのない細道が一本、伸びておってな」
「不思議と足がそっちへ向いてしもうて、
秋桜の野を抜けると、霧の向こうにぽうっと灯りが見えておった。
その灯りに導かれた先に、小さな硝子戸の店があっての──」
「そこから出てきた狐の娘が、珠飾りを差し出して言うたんじゃ。
“この願い、お預かりいたします──珠にこめて”と」
その話を聞いた宿の女将が、湯呑を置いてにやりと笑うてこう言うた。
「それは“草深原狐秋桜堂”じゃな。
願いを呑み込んで眠った者だけが辿り着ける、幻の店さね。
狐火に導かれて現れるあの店は、探して見つかるもんじゃない。
心の奥に“残した何か”がある者だけに、道がひらけるんじゃよ」
「狐に騙されたと思うて帰ってきた者の懐には、
いつの間にやらひと粒の珠飾りが揺れておってな……
不思議なことに、その者の顔は皆、どこか軽うなっておるんじゃと」
いつのころからか、この草深い原っぱの逸話に
不思議な小間物屋の話が加わっておった。
不思議なこの店にたどり着いた者の話によると...
…ああ、あれは、霧の濃い夜だったんです。
秋桜がやけに深く咲いていて、風の音もどこか囁くようで……ええ、あの夜のことは
今でもはっきり覚えております。
草深原の道を歩いていたはずなのに、
ふと風の向きが変わり、
目の前に見覚えのない大木が立っていたのです。
根元には、小さな祠のようなものがあり
古びたしめ縄が巻かれておりました。
祠に目を奪われ
はっと顔を上げたときには
もう草深原ではありませんでした。
たぶん、あれが「草深牧の原っぱ」への
入り口だったのだと思います。
不安に駆られながらも
とにかく進まねばと
知らぬ道をひとり歩いていました。
すると道の先に、ひとつぽうっと灯りが見えましてね。
近づいてみると、月明かりに照らされた硝子戸の奥に、
それはそれは不思議な品々が、まるで息をしているように並んでおりましてな。
店番っぽい少女が店の奥から出てくると
一瞬驚いたような顔したのですが
ここはどこか訪ねると
その店の事を丁寧に教えてくれたのです。
ガラス玉と色とりどり石で編まれた飾りたち。
ひとつひとつが
店の主「十五夜小町」の手仕事と
幻想の記憶から生まれた“語る飾り”
そして古の時を旅する商人から仕入れた
異国の飾りなのだと。
店を切り盛りしているのは、三人と一匹(?)だそうで──
- ✵ 帳簿にも強いしっかり者の狐娘、月音(つきね)さん
- ✵ 好奇心いっぱいで元気な妹狐、桜香(おうか)ちゃん
- ✵ そして、音の隙間から現れるという、翼のあるヤモリの紳士、夜杜(やもり)殿
それから、ふらりと現れるのが、龍の姫君・瑠璃(るり)様。
どうやらこのお店の常連らしく、近くの沼の底に棲んでいて、
不思議と石たちの声が聞こえるんだとか。
ちょっぴり気まぐれで、ちょっぴり我がまま……
でも、とても頼れるお方でした。
あとは、骨董屋と名乗る旅の行商の姿も有りました。
何でも元は異国の貴族だとかで、
今は古の時を旅しながら珍しい品々を集めているのだとか。
店主の十五夜小町や龍の姫君とは古い馴染みのようでした。
そして──ええ、気がつけば、
いつの間にか珠飾りをひとつ、
手にしていました。
何かを願った覚えはないのに、
その飾りだけが...
妙に手放せなかったんですよ。
いま思えば、あの晩、私の胸の奥に残っていた
“ことばにできなかった願い”が、
あの灯りに引かれて、珠のかたちになったのかもしれませんね。
……とまあ、その店にたどり着いた者たちは、みな口をそろえてこう申します。
「願いを胸にしまったまま眠った夜。
翌朝、霧の中にひらく知らぬ道。
ぽうっと灯る灯りの先には、珠に願いを映す店があるのだ」と。
名を──草深原狐秋桜堂(そうふけはら・こすもすどう)。
いまでは、誰が最初に語り始めたかもわからぬまま、
風にのって、灯りに誘われて、
時折その幻の店に辿りつく者がいるとか、いないとか。
その小さな小間物屋には、
物語を宿す飾りと、幻想を彩る道具がそっと
並べられており──
気づいたときには、珠飾りがひとつ
懐で揺れている……。
さて...狐秋桜堂の灯りに導かれるのは──
次は、あなたやもしれませぬねぇ。
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草深原の灯りに導かれたあなたが、
いま手にしている魂飾りが
どんな物語を映すのか──
どうぞごゆるりとご覧くださいませ。
お客様にとって特別な魂飾りと
出会って頂けましたら
幸いでございます。
― 草深原 狐秋桜堂より ―

