2025/07/25 17:35
狐秋桜堂の音楽室に、今年もやってきた“サンバ御一行”。
ド派手な羽飾り、陽気なリズム、眩しい笑顔――楽譜から抜け出た精霊たちが夏風に乗って舞い踊る。
「また、今年も来たか……」
夜杜はジャケットの内ポケットから、今日の気分を反映した“パッションフルーツ&ペパーミント味”の飴を取り出し、ため息混じりに口へ放り込む。
楽譜精霊たちは部屋の端に飾られた古いトライアングルを打ち鳴らしながら踊りはじめる。
「リズムが合わない!」とB♭管さんが叫ぶも、E♭管さんは乗り気で「この熱気こそ夏でしょう!」とサンバ調で吹き鳴らす。
やがて、音符たちがひとりでに譜面から飛び出し、床に「♩」や「♬」を描きながら動き出す。
「楽譜が勝手に踊るな!」と夜杜はスコアを押さえるが...
自分の尻尾が無意識にリズムに合わせて揺れているのに気付き、苦笑いをこぼした。
気づけば音楽室中がリズムに染まり、楽器たちまでリズムに合わせて揺れ始める。
最後に夜杜がピアノの鍵をぽんと押すと、空気がひと呼吸分落ち着く。
「ま、夏くらいは踊ってもいいか。音符がぐちゃぐちゃにならないなら...ね。」
そして今日も、狐秋桜堂の音楽室には音の精たちのざわめきが響き渡るのだった。


