2025/09/09 00:15


狐秋桜堂の音楽室が、月の光に包まれる夜。  

今日は皆既月食。空の月がゆっくりと影に飲まれ、赤銅色に染まっていく。


「月が消える夜は、音楽室も少しだけ宇宙に近づく」  

夜杜はシルクハットを整え、ジャケットの内ポケットから飴缶を取り出す。  

蓋を開けると、ほんのりラムネ味の飴が1つ。


音楽室の仲間たちは、月食の観測準備に大忙し。  

ト音記号は望遠鏡を五線譜の上に設置し、休符たちは月の軌道を模したダンスを始める。  

三味線は低音で月の沈黙を奏で、ピアノは静かなジャズのイントロを響かせる。


「夜杜さん、今夜の演奏は?」  

ト音記号が尋ねると、夜杜は答える。


「Fly Me to the Moon。月に連れて行ってくれと願う歌は、月が隠れる夜にこそ響く」


夜杜がピアノの前に座り、鍵盤に指を置く。  

ジャズの名曲が、音楽室にゆっくりと流れ始める。  

その旋律は、月の影に寄り添うように、静かに、そして優雅に広がっていく。


音符たちが歌詞の断片を口ずさみながら、五線譜の隙間を漂う。


音楽室の天井が開き、月食の空が広がる。  

赤く染まった月が、まるで音楽に耳を傾けているようだった。


「月は、音楽の最も古いーーー

夜空のリスナーかもしれないね。」  

夜杜は飴を口に含みながら、静かに微笑む。


演奏が終わると、月はゆっくりと光を取り戻し始め、音楽室の仲間たちは、月の復活を祝って、静かに拍手を送った。